新しいプロジェクトを公開した直後の1週間、私は Google Analytics と Yandex Metrica を並行して動かしました。機能一覧やスクリーンショット、慣れだけで決めるのではなく、同じ実トラフィックを見ながら比較したかったからです。
1週間後、私がより頻繁に開いていたのは Yandex Metrica でした。決め手はダッシュボード上の特定の数値ではありません。Webvisor のセッションリプレイです。立ち上げ直後の段階では、集計グラフをもう1枚見ることよりも、ユーザーが実際にサイト上で何をしているのかを確認することのほうが重要でした。
当時の第一印象は「Yandex Metrica の圧勝」というものでした。今でもこの用途では Metrica のほうを好みます。ただ、この表現は感想としては正しくても、比較としては強すぎます。1つのプロジェクトを1週間使った経験から言えるのは、あくまで私にとって使いやすかったということです。すべての用途、すべての人にとって Metrica が客観的に優れていると証明したわけではありません。
Google Analytics が「抽象的」に感じた理由
元の記事では Google Analytics を「抽象的」と書きましたが、ここは言い直す必要があります。GA4 に深さがないわけではありません。標準レポートに加えて Explorations、セグメント、User Explorer などがあり、個々のユーザーアクティビティまで掘り下げられます。私が引っかかったのは機能不足ではなく、その時点で欲しかったワークフローとの距離でした。
イベントや集計データを見れば、ユーザーがあるページに到達したこと、イベントを発火したこと、途中で離脱したこと、特定セグメントだけ違う動きをしていることは分かります。もちろん有用です。ただ、未知の UX 問題を調べるときには、数値から「実際にどんな操作が行われたのか」へ頭の中で変換する工程が残ります。
セッションリプレイは、その距離を私にとってかなり短くしてくれました。件数だけではなく、1回の訪問の中で起きた遷移、スクロール、クリック、停止、戻りといった一連の操作を確認できます。それだけでなぜその行動をしたのかが分かるわけではありませんが、仮説を立てる材料は格段に増えました。
Webvisor は「推測」を消してくれるわけではない
元の記事から最も大きく修正したいのはここです。セッションリプレイを見ても、「このユーザーはイライラしている」と直接分かるわけではありません。見えるのは行動であり、フリクションや迷いはそこから推測しているだけです。連打、行き戻り、長い停止、途中離脱などは気になるシグナルになり得ますが、ユーザーの心理を読めるわけではありません。
この区別は重要です。1件の妙なセッションを見ただけで、もっともらしい原因説明を作るのは簡単だからです。そこで出すべき結論は「原因が分かった」ではなく、「検証する価値のある仮説を見つけた」です。
今なら、次の順序で使います。
- まず集計データから、気になるページ、フロー、デバイス、セグメントを絞る。
- ランダムに眺めるのではなく、その条件に合うリプレイを複数見る。
- 画面上で確認できた事実と、自分の解釈を分けて書く。
- 十分な根拠があると判断してから変更する。
- 変更後は再び分析データを見て、測定可能な行動が本当に改善したか確認する。
セッションリプレイは、このループの「仮説を作る部分」を具体的にしてくれます。しかし、検証まで自動で済ませてくれるわけではありません。
新しいプロジェクトで特に役立った理由
公開直後のサイトには未知の UX 課題が多くあります。何か月分もの安定したベースラインも、成熟したファネルも、よくある失敗パターンの蓄積もありません。その段階では、定性的な観察が「そもそも何を調べるべきか」を見つける助けになります。
だからといって、セッションリプレイが集計分析より重要という意味ではありません。両者は答える問いが違います。集計データは「その現象がどれくらい多いのか」を見るのに向いています。リプレイは「ある1件の操作が実際にどう見えたか」を理解するのに向いています。
私にとって強いのは組み合わせです。まずデータでパターンを見つけて具体例を確認する。あるいはリプレイで気になる操作を見つけ、その後に同じ現象が十分な頻度で起きているかを集計で確かめる。この往復ができます。
セッションリプレイにも技術的な限界がある
Webvisor を「完全な真実」と扱えない理由はもう1つあります。記録そのものにも制約があります。Yandex のドキュメントでは、すべての訪問が必ず記録されるわけではないこと、記録の保持期間に限りがあること、ブラウザやページの実装によって記録・再生に影響が出る場合があることが説明されています。動的スタイル、クロスドメイン iframe、プライベートブラウジング、canvas、Shadow DOM などは注意が必要な例です。
つまり、リプレイ表示が壊れていても、ユーザーが実際に壊れたページを見たとは限りません。逆に記録が存在しないからといって、そのセッション自体がなかったとも言えません。
プライバシーも軽視できません。セッションリプレイは通常の pageview 計測よりはるかに多くの操作情報を扱えます。パスワードや機密性の高い入力項目には保護機能がありますが、サイト運営者側でも収集設定を慎重に行い、送るべきでない識別情報を送らず、適用される同意・プライバシー要件を守る必要があります。
では、私はどちらを選ぶのか
このプロジェクトの立ち上げ直後に UX を調べるという用途なら、私は Yandex Metrica を選びました。Webvisor があったことで、「数字が妙だ」から「その数字の背景にありそうな具体的操作を見られる」までの距離が短くなったからです。最初の1週間では、それが決定的でした。
ただし、今なら「Google Analytics は良くない」「Yandex Metrica のほうが優れた分析ツールだ」とは書きません。GA4 は別の強みを持ち、イベントベースの分析機能も、元の短い記事から受ける印象よりずっと深いものです。流入分析、カスタムイベント、各種連携、より広い計測基盤を重視するなら、比較結果は簡単に変わり得ます。
比較期間中に両方を動かすこと自体にも意味はあります。プラットフォームごとにセッション、ユーザー、イベントの扱い方や処理方法が同一とは限らないため、数値が完全一致することを期待すべきではありません。
1週間で本当に学んだこと
結論は、当初の「圧勝」より狭くなりました。しかし、そのぶん確かなものになりました。
Yandex Metrica は、私にとって個々のユーザー行動を確認しやすかったから、より頻繁に使うツールになりました。 数値から具体的な UX 仮説に移るまでの時間が短くなったのです。Google Analytics も役に立っていましたが、公開直後に私が最も知りたかったことに対しては、まず Metrica を開いていました。
Webvisor は推測を確信に変えたわけではありません。曖昧な推測を、検証しやすい問いに変えてくれました。UX の改善作業では、それだけでも十分に大きな価値があります。